約束しよう。

僕らはいつまでも仲のいい友達でいると―――……。


そのままの君で


「何だ。腹黒天使。どこかに行くのか。」
急に呼び出されて不機嫌極まりないルビエルはトゲのある声でテリオスに問いかける。
「うん。ちょっと旧友に会いにね。だから僕の代わりに仕事よろしく。」
大きなリュックにあれこれと詰め込むテリオスの姿は幼い子供が遠足の準備をしているようだ。
「旧友……ああ。元副官か。あの、クレイスとか言う。」
「うん!…でもねルビエル。」
テリオスの顔から無邪気な(というか腹黒い?)笑みが消えた。
でてきたのは、十審将<臥天使>の、自信にあふれた冷たい笑み。
「今も昔も。僕の副官はクレイスだけだよ。」

心なびく時 きっと君を思い出すよ―――。

「【元】なんて、つけないでくれるかな?」
「…ふん。人間ごときに。付き合いきれんな。」
そう言い残し、ルビエルは踵を返して歩き出した。
「まったく。君だってリプサリスにに執着してるじゃないか。どこが僕と違うんだか。」
皮肉めいた口調で、わざと聞こえるようににんまりと笑ってテリオスは言ってのける。
ぴたりと、ルビエルの足が止まった。
「貴様と………。」
「ん?何??聞こえなーい。」
わざと馬鹿にするような態度を取る。ソレは、この先に起こるであろう、楽しすぎる結末を
みる。ただ、そのためだけに。
「貴様と一緒にするなああああああ!!!」
「うわっ!あっはっは!!キレたキレた♪」
ルビエルの槍をひょいひょいとよけてリュックを背負い、テリオスは一気に走り抜ける。
「じゃあねルビエル!愛してるよー!」
「消え去れこのっ腹黒悪魔がああああ!!!」
テリオスは、怒り狂うルビエルを茶化すように大笑いしながらプロデヴォン教会をあとにした。

時は流れて 僕らは別々の人生を歩んでいくけれど
    
     いつかどこかで偶然であったなら 心の底から語り合おう―――……。

「さーてとっ。面白いものは見たし。さっさとクレイスのところに行くかねー。」
あの大戦から、五十年以上が過ぎた。
二十年ほど前、もう戦えないだろうと判断されたクレイスは退職。
教団から、追い出されるという形で僕の隣から消えた。
僕の抗議も。まったく届かずに。

変わらない何かを 確かめあって生きたい。

「ん?アレは―――……。」
街の隅のほうで見つけたのは、小さな移動サーカス団。
その中に居たのは見覚えのある黒羽銀髪の少年と白羽金髪の少年。あの大戦の英雄達。
「アベルとカインじゃないか♪」
面白いものを見つけた。とテリオスはビラを配っているカインの背後から近づいていく。
「おにーさんっ!僕にも頂戴?」
「あ。はーい!どう―――……」
ぞ。という前にカインの動きが止まった。
「久しぶりだね?カイン。」
ビラを奪い取るように受け取りテリオスはニッコリと微笑む。カインはみるみる顔が青く染まっていく。
「う……うわああああああ!!!!」
カインはビラをばら撒きながら逃走した。まるで、鬼でも見たかのように。
「?何だ!?っておいカイン!サボるなよな!」
悲鳴に驚いて様子を見にきたアベルを通り過ぎて逃げていくカインに
「なんだあいつは…とアベルは溜息をつき、カインが来た方向を振り返った。
「やあ。アベル。」
超至近距離でひらひら〜と手を振ってやる。(もちろん嫌がらせ。)
「うおっ!!?何故居るキサマッ!!!」
アベルはズザザッと十Mほど引く。まるで何か悪いものでも見たかのように。
「あっはっはっは!愉快愉快♪」
二人の行動に大笑いしながらテリオスはサーカスを後にする。
「おいカイン!しっかりしろ!!」
「アベル―――!!!鬼だ!!鬼が居たよ――――っ!!!」
若干一名に大きく深い恐怖を思い出させて。

いくつもの想いを素直に、伝えたい。
     
               そんな仲間で居てほしい。



                 前編・完